日常に戻っていく不安


電気、通信、水道が復旧。ボランティア活動はいったん切り上げて、仕事再開に向けてやっと部屋の整理を始めました。こうしてみんなが少しずつ日常に戻っていくことをきっと復興というのでしょうが、僕はこのまま日常に戻っていくことに不安を感じます。

地震が起きて避難所へ向かう間、何度も「これで全部やり直しだな」とつぶやいていました。あらゆる価値観がリセットされて、もっと正確に言えば、これまでなるべく社会に適応させていた価値観が一気に砕けて、生きること、働くこと、家族、故郷、地元、生活、人間関係、あらゆることが仕切り直されるだろうと思いました。

ところがこうして日常に向けた一歩一歩を歩むうちに、価値観まで元に戻りつつあるように思います。それは、幸いにも被害が小さかったこと、家族が皆無事であったことが要因なのでしょうが、「これほどのことがあっても自分は変わらないのか、変われないのか」と忸怩たる思いにかられます。

部屋の窓から見える景色は、すでに震災などなかったかのように静けさを取り戻しています。そんな中、日常に戻るのを必死に抵抗している僕がいます。誰もが平穏な日常に戻ることを望んでいる中でこんなことを考える僕はきっと阿呆なのでしょう。だけどやっぱり、このまま日常に戻ってしまうのは不安だ。