酒の呑み方

酒を呑んでる席で、話題がそこにいない誰かのうわさ話に及んできたらもうお開きにしたほうがいいんだと思う。
差し向かいにいるあなたのこと、わたしのこと、お互いの家族のこと故郷のこと、目の前の酒のこと、肴のこと、カウンター越しにいる親方のこと、その店のこと、仕事のこと、趣味のこと、いつか見た風景のこと、人生のこと。話そうと思ったら一晩話せると思うけど、たとえばそれが続かなくなったら静かに酒と料理を味わえばいい。無理に話題をつくらなくても一緒に盃を交わすだけで満ち足りた気分になる、そんな相手とこそ酒は呑むべきだ。
故人を偲んで呑むのはいい。うわさ話をして魂を呼び寄せてやればいい。盃をもうひとつもらうともっといい。生きてる誰かのうわさ話をするくらいだったらそこに呼んで一緒に呑めばいい。呼びたくない人を話題にしてもつまらない。